今日は,登録者500万人を超えるYoutuberのAli Abdaalさんという方が書かれた「Feel Good Productivity」という本を紹介します。
英語の勉強も兼ねてAliさんの動画を観ているのですが,いつの間にかファンになってしまいました。
Youtubeプレミアムに登録してAliさんの動画をダウンロードして,通勤中とか料理中など暇さえあれば聴いています。
聞き流しが効果あるのかはありませんが,「英語をとにかく聞きまくりたい!」という方に,ぜひオススメしたいチャンネルの一つなので,気になる方はチェックしてみて下さい。(かなり早口なので,速度落として聞くのもアリかと思います。)
【Ali AbdaalのYoutubeチャンネル↓】
https://www.youtube.com/@aliabdaal
【ポッドキャスト↓】
https://www.youtube.com/@DeepDivewithAliAbdaal
さて,本題に戻ります。
この「Feel Good Productivity」という本の内容を一言で表すと,「気分が良くなること(=Feel Goodになること)が,生産性(=Productivity)を上げる」ということです。
「生産性を上げる」と聞くと,「バリバリ仕事で結果を出すぜ!」みたいなイメージで,「なんか大変そう(疲れそう)…」と思った方もいるかもしれませんが,この本は少し違います。
むしろ,「辛い・しんどいことばかりしてないで,もっとFeel Goodになることを優先しようぜ!」という内容です。
本書によるとFeel Goodになることは,私たちのエネルギーを生み出し,生産性を上げ,人生を豊かにしてくれると言います。
そして,
「Feel Goodになる」
→「エネルギーが生まれる」
→「生産性が上がる」
→「Feel Goodになる」
→→→
という正のループが生まれます。
つまり,Feel Goodになると生産性が上がるため,更にFeel Goodになる。だから生産性が上がる。
何が言いたいかというと,”生産性”という話になると,
- 「食事も体調も時間もちゃんと管理して,休みなくバリバリ働け!」
- 「規律をもって,自分に厳しく,自分を追い込め!」
- 「血のにじむような努力をしろ!」
こういった“No Pain, No Gain”的な考えになりがちですが,むしろ逆かもしれないぜということです。
少年ジャンプみたく,”たゆまぬ努力によって逆転するヒーロー”は物語でよく描かれますし,勤勉さは産業時代に生産性を上げるべくして広まった考え方の一つですので,このような考え方になることはある意味仕方のないことですが。
そもそも,”生産性とは何ぞや”といった生産性そのものに対して疑問視する人たちもいて,一言で”生産性”といっても,色々な切り口で議論できる訳ですが,ここでは一旦置いておきましょう(生産性がその人の価値を決める訳でもなければ,生産性が高いことが正義な訳でもなく,誰もが生産性を追い求めるべきだという訳でもないのである!)。
今日の記事はあくまで,「生産性を上げたいんや!」と必死になって,むしろ”Feel Bad”な方向に向かって迷い込んでしまっている人向けに,「ちょっと一回考え直してみないか?」と待ったをかける一冊として,本書を紹介しようと思います。
Aliさんは本書だけでなく自身のYoutubeで「努力は必ずしも苦痛である必要はない」という話をよくしています。
“True productivity is not dicipline, it’s joy.”(本当の生産性とは,規律(=自分を律して行動すること)ではなく,”楽しむこと”である)ということです。
生産性を追い求める過程で,必ずしも辛酸を舐めるような苦しい思いをする必要はないというお話です。(このような過程を英語だとJourney(旅路)なんてよく言われます。ジャーニーって響き,なんかいいですよね。)
「過程を楽しむ」なんてこともよく言われますが,本書はその考え方に近く,「じゃあどうすれば過程を楽しむことができるようになるねん!」という疑問に対して色々なヒントを書いてくれています。
本書の構成(目次)を一応紹介しておくと,以下のように3つのパートに分かれており,それぞれ3章ずつ含まれています。
本書の構成
Part1:ENERGISE(エネルギーを与える):Feel Goodになる活動を見つけるヒント
1章:Play(遊び)
2章:Power(力)
3章:People(人)
Part2:UNBLOCK(解き放つ):Feel Goodになるのを妨げるもの
4章:Seek Clarity(明確にする)
5章:Find Courage(勇気を見つける)
6章:Get Started(始める)
Part3:SUSTAIN(維持する):Feel Goodを維持する方法
7章:Conserve(保存する)
8章:Recharge(充電する)
9章:Align(整える)
本記事は自分なりの解釈で英語訳しておりますので,ニュアンス等気になる部分があるかもしれませんがそこは大目に見てもらえると嬉しいです。
洋書の中でも比較的読みやすい部類に入るかと思いますので,目次を見てな内容が気になった方はぜひ本書を一度手に取ってみて下さい。
このブログでは,本書の中から個人的に参考になった考え方を自分なりの解釈でいくつか紹介しようと思います。
私たちが,Feel Goodになる上で役立つ科学的根拠に基づいた考え方がたくさんあるので,ぜひ最後まで読んでいってください。(この本の参考文献を見て衝撃を受けました。なんとほぼ100近い論文から引用されています。)
前置きが長くなりましが,早速いきましょう!
ENERGISER(エネルギーを与えるもの)を見極める
まずは,本書のPart1で紹介されている「Energiser(エネルジャイザー)を見極めよう」というお話です。
Energiserとは,私たちにエネルギーを与えてくれるもの,ポジティブな感情をもたらしてくれるものを指します。
英語の豆知識
Energy(エネルギー):名詞形
→Energise(エネルギーを与える):動詞形(他動詞でenergise yourselfなどと使う)。
→Energiser(エネルギーを与えるもの):名詞形
本書では,Energiserとして以下の”3つのP”が紹介されています。(後ろの説明は私なりの一言解釈です。”3つのP”。ここは触れない。決して触れないぞ…。)
①Play(遊び):その活動に遊び(心)を取り入れる
②Power(力):物事をコントロールする力,自信を手に入れる
③People(人):互いにエネルギーを与え合える仲間と過ごす
本当は3つの要素それぞれについて説明したいところですが,日が暮れてしまいますので今日の記事では,1つ目「Play(遊び)」についてのみ紹介しようと思います。
”遊び”と聞くと,生産性とは程遠い存在のように聞こえるかもしれませんが,実はそうでもなさそうなんです。
本書ではノーベル物理学賞を受賞したリチャード・ファインマン博士(1918-1988)の逸話が紹介されています。
ファインマン博士はかつて,妻を結核で亡くし,物理学に対する研究意欲を失っていた時期があったそうで,ある日キャンパス内のカフェテリアで学生が食器のトレイを空中で回転させているのを見て,とある理論を思い付いたとのこと。
その時,自身がかつて物理に燃やしていた情熱の源を思い出します。
それこそが,「遊び」だったのです。
ファインマン博士はかつて,物理を楽しみ,物理で遊んでいた。
そしてその後,再び物理の楽しさを思い出し,ノーベル賞に相当する理論を導くに至った,というお話です。
ファインマン博士の逸話に限らず,「遊び」が何かの発見につながったという逸話は色々なところで耳にします。
生産性と聞くとついつい真面目になってしまいがちですが,むしろ「遊び」こそが重要だということですね。
さて,「遊び」がメリットをもたらすことが分かったとして,気になるのは「どうやって日々の生活に遊びを取り入れればいいのか?」ということだと思います。
子どもの頃は,毎日が冒険のように感じられていたかと思います。
木登りしたり,ショッピングモールを駆けたり,秘密基地作ったり…
大人のように目標に向かってもがいたり,結果を気にしたりすることなく,私たちはただただ好奇心に駆られて冒険を楽しんでいたはずです。
成長するにつれて,自分の能力の限界を思い知らされ,自信をくじかれ,次第に遊び心も忘れていってしまうんですね。(悲しいぜ…。)
そんな私たちが,もう一度「遊び」を生活に取り入れるために,何ができるでしょうか?
本書では,その最初の一歩として「自分の遊びの性格タイプを選ぶ」ことが紹介されています。
性格を”選ぶ”とはどういうことかというと,アクションRPG等のゲームを例にとると,「剣士で物理攻撃でザクザク切って戦いたい」とか,「魔法を駆使してクールに戦いたい」とか,「モンスターを操って,器用に戦いたい」とかありますよね。
それぞれ長所・短所がある中で、自分にとって「こういうタイプが好き」と感じるものを選びますよね。
これを現実でやってみようぜということで,本書では8つの性格タイプが紹介されています。
「自分の性格はこうだから…」とか縛りつけてしまったり,自分に嘘をつくようなことをする必要はなくて,ゲームでキャラを選ぶ時と同じように,自分に合っていそうなタイプを考えてOKとのこと。
もちろん,この手の性格診断的なツールは,鵜呑みにしないことが大事だということは断っておきますが,自分の行動指針のヒントとして捉える上で役に立ててもらえればと思います。
本書で紹介されているのは,以下の8タイプです。
①The Collector(コレクター):収集家
→収集したり,組織するのが好き。希少な植物を探したり,文書の山やガレージセールを漁るといった活動を楽しむ人。
②The Competitor(コンペティター):競争家
→ゲームやスポーツ,競争するのが好き。ベストを尽くしたり,勝負に勝つことを楽しむ人。
③The Explorer(エクスプローラー):探検家
→放浪したり,新しい場所やモノを発見するのが好き。行ったことが無い,見たことが無いものを見つけるのが好きで,ハイキングや旅行,冒険を楽しむ人。
④The Creator(クリエイター):創作家
→モノを作ることが好き。毎日を絵描きや音楽作成,ガーデニングなどに費やすことを楽しむ人。
⑤The Storyteller(ストーリーテラー):作家
→想像力豊かで,その想像力を駆使して人を楽しませるのが好き。物書きやダンス,演劇やロールプレイングゲームを楽しむ人。
⑥The Joker(ジョーカー):滑稽家
→人を笑わせるのが好きな人。パフォーマンスを披露したり,即興を演じたり,いたずらをしたりして人を笑顔にすることを楽しむ人。
⑦The Director(ディレクター):指導家
→計画したり,組織して人をリードするのが好き。舞台のパフォーマンスを指示したり,会社経営や政治,社会運動などを通して多くの異なる人や物を一つにまとめるのことが得意な人。
⑧The Kinesthete(キネスティート??):運動感覚家(すいません,うまいカタカナ表記が分からず...)
→身体を使う活動が好きな人。アクロバットや体操,パルクールなどの活動を楽しむ人。
これを読んで私は,おそらく④クリエイターがいいなぁと思いましたが,皆さんはどうでしょうか?
モチベーションには4種類ある
次に紹介するのは,本書のPart3(Chapter9:Align)にある,「4種類のモチベーション」についての話です。
自分をFeel Goodにしてくれる活動を見極めるためには,その活動をしたいと思う理由,モチベーションを考えてみるとヒントが得られるかもしれません。
本書では,まずモチベーションを大きく2種類に大別しています。
それは,
「外的モチベーション(Extrinsic motivation)」と,
「内的モチベーション(Intrinsic motivation」です。
読んで字のごとくですが,もう少し詳しく解説すると,
”外的モチベーション”とは,その行動の動機が外から与えられる場合のことを指します。分かりやすい例を挙げると,「報酬がもらえるから」とか,「人からすごいと思われたいから」とか,「人からやれと言われたから」とかが当たります。
一方で,”内的モチベーション”とは,その行動の動機が内側から沸き起こる場合のことを指します。例えば,「(たとえ報酬がもらえなくとも)やりたいからやる」とか,「周りに何と言われようとやりたいからやる」といったケースです。
ここまでを聞くと,「はいはい。外的モチベーションは悪くて,内的モチベーションがいいって話でしょ。」と思うかもしれませんが,それはやや早計です。
確かに外的モチベーションよりも,内的モチベーションに基づいて行動している方がFeel Goodにつながりやすいことは想像できるかと思います。
ただ,私たちの全ての行動を内的モチベーションに基づいてしようとするのは,いささか非現実的な話です。
お金は欲しいこともあるし、すごいと言われたら嬉しいですよね。
私自身,読書やゲームが好きですが,それだけやってて生きていくことができるか?と言われると,かなり難しいというのが実際のところ。”お金をもらえなくてもやりたい行為”でお金を稼ぐことができたらどんなにいいことかとも思います。
そもそも,「100%内的モチベーションに基づいた行動って何やねん」という率直な疑問も生じます。
オンライン英会話で知り合った私の友人は,「英語を教えることが心から好きで,例えお金がもらえないとしてもやるだろう」と言っていました。彼の場合,自分の内的モチベーションに基づく行動でお金も稼いでおり,「この仕事が100%自分に合っている」という思いで仕事ができていると言っていました。
ただ,このようなケースはそう多くないかと思います。
ぱっと思い付くのは,ボランティアやチャリティー活動も「お金がもらえなくともやる行為」ですので,内的モチベーションのように見えます。
ただ,すこしひねくれた考え方かもしれませんが,仮に学生がボランティア活動をしていた場合に,「就職活動で活かせるから…」という動機があったらどうでしょう。
はたまた,「ボランティアやチャリティーを通して,優しい人だと思われたい…」という隠された動機があったとしたらどうでしょう。
たちまち,それは外的モチベーションに変わります。
もちろん,ボランティア活動をしている人を否定したり批判したい訳ではなく,善意でやっている人も多くいるはずです。(気分を害されたら申し訳ございません。)
そう考えると,内的モチベーションに基づく行動を見つけること自体,そう簡単では無いのかもしれません。
そこで本書では,外的モチベーションを”自主性(Autonomy)”の程度に基づいて更に3種類に分けます。(勝手にレベル分けしました。)
レベル1:強制的にやらされているケース(自主性0%)
(例)やらなければ親に叱られる,罰がある,生きていけないといったケース。
レベル2:罪悪感からやるケース。やってもやらなくてもいいが,やらないと罪悪感を感じてしまうのでやるケース(自主性30~50%)
(例)勉強したくないけど,親が学費を払ってくれているので,やらないと罪悪感を感じる。
レベル3:やらなくても問題ないが,自分がやる理由,メリットを認識した上でやるケース。(自主性80~100%)
(例)やらなくても特に支障はないが,仕事でもプライベートでも選択肢を増やす上でメリットしかないから英語を学習する。本業だけで生活はできるが,更なる自由を求めて副業する。
そして,この中で私たちをFeel Goodにさせてくれる可能性があるのは「レベル3」のみです。
つまり現実的に考えると,私たちは外的モチベーションの中でも「レベル3」の活動を増やしていけばいいということになります。
本書を読むまで,私自身このことを知らずに内的モチベーションに基づいた行動を探す必要があると思っていたのですが,それは非現実的な話で,部分的に外的モチベーションに基づいていてもFeel Goodになれる道はあるということだったんです。
「内的モチベーションが善,外的モチベーションが悪」といった単純な話ではなく,”自主性”に注目して,自主性が高い行動を増やしていくことが大事っちゅうことですな。
まとめ
今日の記事では,「Feel Good Productivity」(Ali Abdall)という洋書について紹介しました。
とは言ってもほんのごく一部を紹介しただけで,本書には私たちをFeel Goodにしてくれるヒントが山ほど盛り込まれています。
またAliさん本人も,下記の動画で本書の内容をざっくり解説してくれているので,気になる方は動画も観てみてください。(ちなみに他にも役立つ動画をたくさん挙げてくれています)
「Feel Good Productivity」の考え方は,きっと皆さんの役に立つはずです。
少しでも参考になれば嬉しいです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
(※まだまだ内容を紹介しきれていないので,気が向いたら追加で記事を書こうと思います。)